shimaenaga’s blog

読書、算数、理科の楽しさを子供たちに伝えられたらいいな

読後感想「算数文章題が解けない子どもたち」

タイトルの本をアマゾンオーディブルで偶然見つけました。気になってすぐに視聴しました。音声だけでは理解できなかったところもありテキストの本も読むことにしました。

 

この本の中にあった例題(内容は少し変えました)を子ども(一年生)に出してみました。

私「船の中に羊が20匹、やぎが10匹います。船長さんは何歳でしょう」

子ども「30さい」

私「...」

子ども「まちがっているの?」

私「正解は「船長さんの年齢はわかりません」」だよ

子ども「そんなの問題じゃないよ」

 

このやり取りを通して文章題を解くということは様々な認知能力を使うのだなと感じました。

20+10=30

を知っていても、それをどの場面でどのように使えばよいのかを的確に想像しないと文章題の正解にはたどり着けないのだと思いました。そして、それはこの本に書いてあるとおり、子どもたちにとっては大人が思う以上に困難なことなのだと実感しました。

それを認識したうえで子どもたちに算数の文章題を教えないと「なんでこんなことがわからないのだろう」と思ってしまうところでした。

この本には私がこれまで認識していなかったことが書かれていました。それは以下の通りです。

 

  1. 子どもたちは大人(少なくとも私)たちが思っている以上に数や言葉に対する認識が少ない。
  2. 文章題の問題文をよんで的確に状況を想像するのはとても難易度の高いこと

1については一例ですが次のように書かれていました。

「小学生は、まず数のシステムを学ぶ。1から10まで、次に10から100まで、100から1000まで、と数え方を学んでいく。多くの子どもは、乳幼児期には、モノとの対応で数を理解する。モノの数を数えるために「数」が存在すると思っているのである。したがって自然数ではない数、つまり小数や分数で、その意味を理解することに高い壁がそびえている。」

またこういった数に対する思い込み(当然の思い込みですが)を「スキーマ」(人が経験から一般化、抽象化した、無意識に働く枠組み知識)と呼んで数の概念に対する正確な理解を妨げているとも書かれていました。

 

2については文章題を解くためには様々な認知能力を同時に働かせるので単に計算ができるというだけでは正解にたどり着けないとのことでした。

様々な認知能力とは以下の5つです。(詳細は書籍を参照ください)

  1. 実行機能
  2. 作業記憶能力
  3. 視点変更能力(他者視点取得能力)
  4. 推論能力
  5. メタ認知能力

これらがうまく働かないと問題文に出てきた数字を知っている演算(よくあるのは授業で習ったばかりの演算)にあてはめてとにかく答えをだせばよいと思ってしまうとのことでした。(冒頭の子どもとの会話の通りです)

 

これらのことは年齢が高くなれば生活の中で自然にわかってくるものと思っていましたが学校での授業の進度の方が子どもたちが経験値を積んで数に対する認識を高めるスピードよりも速いことが多いのでそのずれを補っていくのが大切なのかなと感じました。

 

人間が数の概念を生み出したとき、最初はモノを数えるためだったと思いますが、次第に小数、分数、負の数、....とその範囲を広げてきました。これらは必ずしも普段の生活のなかの実例にあてはめられることはないと思います。

「負の数かける負の数は正の数になる」ってあまり実例が思い浮かびませんよね。

実例がなくてもそのように定義することで概念の範囲を広げてきたんだと思います。

 

数の概念への認識の少なさに加えて、たくさんの認知能力を働かせて文章題を解くことがそのハードルを高めていると思います。

 

子どもたちと一緒にこれらを解くときはじっくり落ち着いて取り組めたらと思いました。

 

とてもいい本に巡り合えました。

 

記事を最後まで読んでいただきありがとうございました。


算数文章題が解けない子どもたち ことば・思考の力と学力不振

 


算数文章題が解けない子どもたち: ことば・思考の力と学力不振

 


算数文章題が解けない子どもたち ことば・思考の力と学力不振 [ 今井 むつみ ]